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「もう、何の話ですか!」
事実無根ですよ。
そんな私とミラのやり取りを。
くすくすと病人に笑われてしまう。
「お二人は、仲がよろしいんですのね」
「いえ、よろしいというか、なんというか」
「でもわたくし……先生が悪魔でも、構いませんわ」
「……!?」
「先生が来てから、わたくし毎日が楽しくて仕方ありませんもの。――こんなに、色々なことが一度に起こるなんて、今までにありませんでしたわ。ですから、この楽しい日々の対価を、何かでお返ししなければ……」
「それは……」
光栄な話だ。
教え子には魔術を好きになって欲しい。
その第一歩は、もう叶っているのかもしれない。
そう思わせてくれる。
リースリット嬢の言葉に。
私が少し感動していると。
カンカンカン。
と、馬車の段を上る足音がして。
突然。
ガチャリと、馬車の扉が開き。
「ちょっと、お嬢様には安静にしてもらわないといけない、て言ったのあんたでしょ! 何してるの!」
私とミラのやり取りが漏れていたのか。
それとも、リースリット嬢の笑いが漏れていたのか。
馬の世話をしていた筈のメイドに怒られてしまった。
「ごめんなさい」
「せんせー怒られた」
愉快そうに言うんじゃありません、ミラ。
それはそうと。
改めてお嬢様に言う。
「――まぁでも、少しお休みになられたほうが良いのは事実です」
「でも……なんだか眼が冴えてしまいましたわ」
ミラが余計な話をしたからですね、解ります。
「絵本でも読んであげたら?」
面白半分でミラは言ったのだろう。
でも、それは良い案だと私は思った。
「――では、少しだけ、座学と行きましょうか」
「座学……?」
「ええ。魔法の歴史について――」
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