リースリット と 魔術基礎実習

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 目指す先は、魔の領域の直前に寄った最寄の街だ。  そこは、魔物の領域に近い事から、高い壁と練度の高い衛兵に守られた城塞の街だった。  私はそこに続く街道、元来た道を走る。  風の概念――。  つまり『風』という属性が持つ役割である、移動、運搬、攪拌、風化等の自然物の無意識を抽出し、加護として纏う術式により――。 強化した脚力で、ひた走る。 ついでに、普段はあまり大気に混じっていない『火』と『熱』の現象核(オリジン)が幸運にも多く漂っていたため、これ幸いと『熱』の現象核(オリジン)をありったけかき集め、『持久力増強(エナジー・オブ・ヒート)』の術式も施す。 それで四足動物の全力疾走に近い速度を維持し続け、およそ数時間で辿り着くことができた。 「はぁ、はぁ……さ、さすがに、堪えますわ」  街の開かれた門の前で、上がった息を整える。  帰りも同じことをすると考えると、気が滅入るけれど、背に腹は代えられまい。  少し時間をおいて、息を整ったところで、私は異変に気付いた。  何か、おかしい。  以前この場所を通った時と、門の様子が違う――。
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