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よく見ると、開かれていると思っていた街の門は、破壊され、押し倒されたような状態であり。
そして、少し焦げ臭い。
普段立っている門番の衛兵も姿が無い。
「……もしや面倒ごとですか?」
呟きながら。
私は、警戒しつつ、街の中に足を踏み入れた。
すると、街の入り口一帯の建物が軒並み真っ黒に焼け焦げて倒壊していた。
その周囲には、後片付けに追われている民が何人も見える。
そして、辺りに残る、魔術の痕跡。
それは、『火』の魔術が行使された証だった。
途中の大気に『熱』の現象核が多かったのはそのせいだろう。
ひとりぽつんと、真っ黒に焦げた店の看板を、悲しそうに見上げているおじさんに声をかける。
「魔物に襲撃でもされたんですか?」
「え? ああ……。そうさ。人型の魔物が、火を放ったらしくてね。おかげでこの有様だよ」
私の声に振り向いたおじさんの顔は、覇気が感じられなかった。
目の前の無残に崩れ落ちた建物がこのおじさんのお店だったとしたら、無理もない話だ。気の毒に。
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