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「でも、おじさんが無事でよかったじゃないですか」
ふ、他人事だねぇ、とおじさんは嘲笑しつつ。
「まぁ、一目散に逃げたからな。――その代わり、戻ったら店が無くなっちまってたけどよ」
それにしてもこの街には訓練の行き届いた兵士が多数いたはずだ。
その者たちはどうしたのだろうか。
「そういえば、衛兵達は?」
「ん? ああ、デカブツとやり合って、重症多数だとさ。今教会で治療を受けてる筈だ」
「デカブツ?」
「そうさ。屈強な巨人だったって話だ。そいつが魔法を使う魔物を大勢引き連れて来たんだ」
魔の領域が近いとそういうこともあるだろう。
人族の領域を侵略しようとするのか、それとも食料に困るのか。
魔物の事情は定かではないけれど。
どっちにしろ迷惑に変わりない。
「なるほど――」
私はもう一度、崩れた建物の状態を見る。
魔法の残滓からして、今しがたという話ではないだろう。
幾日か前のことのようだ。
つまり、まだこの街に魔物が居るということではなさそうだった。
「――撃退は出来たんですね」
「人型はな。ただ、デカイのは逃がしちまったらしい。たぶん、北の森の方へ戻ったんじゃないかな」
「そうですか」
まだ街の中に居るのなら面倒だったが、良かった。
街の安全は既に確保されているらしい。
奮闘した衛兵たちに感謝しよう。
「ところで、あんたは何しに? まさか北のほうから来たのか?」
「え? ああ、ちょっと食料を買いに……。――どこかに旅人向けの食料品店あります?」
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