23人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
「オレも昔は魔術師を目指してたんだけどな。――ぜんぜん才能が無くてよ。魔法具の目利きもねぇし。結局、細工のほうに逃げちまってたんだ……。こんな半端な魔法具店で、今までやってこれただけで奇跡みたいなもんだね」
その様子は、もうお店の再建なんて考えて無さそうな雰囲気だ。
まぁ、店が無くなってしまったのだから気持ちはわかるし、確かにこの品を見る限り魔法具店としては微妙だったのかもしれないが。
「客層は、女性が多かったのでは?」
「え、ああ……そういえば、そうだったな?」
「でしょうね? 常連客も居ましたか?」
「居たよ? なんでだ?」
「客の多くは恐らく、魔法具としてではなく、アクセサリーとして買っていたんでしょうね」
「そりゃどういう意味だ?」
「どうもこうも」
私は懐から、財布代わりにしている小袋を取り出すと、そこからコインを1枚、おじさんに向けて放り投げた。
それを掴み取ったおじさんは驚く。
「何のつもりだ……って、こりゃタリス王金貨じゃねぇか!?」
最初のコメントを投稿しよう!