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「――これは買わせてもらいます。ただで頂いたものを差し上げたのでは、様になりませんからね」
「はぁ? いやしかし、これはさすがに貰いすぎだぜ」
「おつりは差し上げます。お店の再建頑張ってください。諦めたら後で後悔しますよ」
私は言うだけ言って背を向ける。
サッサっとお嬢様の所へ帰らねばならないし。
少し別の楽しみが出来たからだ。
「それでは」
「おい」とか「待て」とか、背中から呼び止める声を無視して。
私は、脚力強化を施し、街の外へ駆け出すのだった。
数時間の後。
魔の領域に戻るころには、もう夜になろうとしていた。
けれど、目指す先の森の空は闇色ではない。
煌々と紅蓮の炎を映していた。
私は、嫌な予感がして足を速める。
そうして、駆け込んだ野営地では、既に火の手が上がっていた。
しかも――。
「これは、――魔術の炎……!?」
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