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野営地の入り口は、あちこちで火柱が上がっていた。
周囲に散った魔術の『残滓』――『現象核』、『魔素』の様子からして、そのどれもが、魔術で放たれたモノだと解る。
高い確率で、これは魔物の襲撃だ。
ミラが護衛をしていたのだから、酷い事にはなっていないはずだ。
だけど万が一の可能性を考えると、一抹の不安がよぎる。
何よりも真っ先に、お嬢様の無事を確認しなくては。
「リースリットお嬢様!」
私は、声を上げ、煙と焦げた匂いで充満する一帯へ足を踏み入れる。
目指すのは、馬車を止めていた場所だ。
「リースリット様ー!」
「リース様ー! どこですー?」
そんな途中。
焼け焦げた人型の魔物が、地面にいくつか転がっているのを発見する。
――ケパロウラか。
こいつは、ヘビの頭に人型の身体を持つ魔術師タイプの魔物だ。
炭になって絶命している所を見ると、恐らくミラに魔術を跳ね返されてやられたのだろう。
火の魔術に人型の魔物……。
食料を調達しに行った街のことが思い出される。
あそこを火の魔術で襲ったのも人型の魔物。
そこには確か、巨人が混じっていたと聞いている。
もしかして。
そう思いつつ。
やがて私は野営地の一番奥地に来た。
一番立派な建物、その陰から暗闇に目立つコントラストが垣間見えてくる。
真っ白な馬車の後部だ。
馬車は、街へ向かった時と場所は変わっていないようで、騎竜二頭も無事な様子だ。
しかし周囲にお嬢様たちの気配はない。
――ミラやお嬢様たちはどこへ?
そう思うと同時に。
うがぁぁあぁ!
何者かの怒号のようなモノが響き渡った。
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