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一段落して。
お嬢様たちが馬車から降りてくる。
「ひう、怖かったですわ」
リースリット嬢は半泣きだった。
無理もない。
しばらく前までは魔物なんて見たことも無かったはずだ。
「申し訳ありません、もう少し早く戻れていれば……」
「いえ、大丈夫ですわ。ミラ様が居てくださいましたもの」
そうして、リースリット嬢は周囲を見渡し、炭となった魔物の死体や、肉片や、骨片や、熱で蒸発したり地面にこびりついている血だまりに、絶句しているようだった。
当然その光景はメイドの目にも入る。
「――こんなところにいつまでもお嬢様を置いておけません、なるべく早くにお屋敷に……」
「それはそうだけど、そうもいかないでしょう……?」
アシュリーの言葉を、もう一人が諫める。
危険な所にお嬢様を置いておけないというのも正しい事かもしれないけれど、見方を変えれば、さっさと魔術を習得してくれというプレッシャーにもなるからだ。
しかしそもそも、現段階でリースリット嬢はとても頑張っている。
これ以上ないくらいの成果をすでに出しているのだ。
今以上を求めるのは、酷というもの。
「恐らくもう一息で習得できると思いますので……」
もう少しだけ、待って欲しい。
メイド達にそう言いかけた。
そんな中、リースリット嬢がふと何かを思い当たったようだ。
「そういえば、先生。魔物……? も魔術を使うのですね?」
「え? ええ、そうですね。我々のように、魔素に抗う進化ではなく、身をゆだねる進化を選んだ者たちですから、どちらかといえば私達よりも魔術に長けているものが多いのですよ」
「そうですのね……でも」
でも……?
「先生の魔術よりも、雑でしたわ?」
「ざ、雑……?」
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