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「はい。先生の魔術は、美しく編まれた刺繍のような魔術ですけれど、先ほどの者は、雑に積み上げた積み木のような魔術に感じましたわ」
そう微笑混じりに、首をかしげる仕草は、何気ないものなのかもしれない。
けど。
このお嬢様は自覚しているのだろうか?
この短い期間で、こんなにも精密に魔素や魔気の動きを感じれるようになっているなんて。
やはりこの環境が、魔術の開花を急速に早めているとしか思えない。
「驚きましたよ、リースリット嬢」
「はい?」
「お嬢様は既に、魔術の動きが見えているのですね」
「え?」
あ、そういえば。
そんな様子で、リースリット嬢は一瞬ぽかんとした表情を見せた。
「わ、わたくし、本当に、みえているのですか……?」
周囲を、その森の空、大気を見渡すお嬢様。
無論、視覚で見ることは不可能だ。私にもできない。
だが、意識を働かせることで、感じられるのだ。
その感覚を、脳裏で人は組み立て、絵や図形のように変換して感じ取っているのだろう。
それがリースリット嬢にとっては、刺繍や積み木なのだ。
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