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そして――。
「……ううん、見ても全く理解できませんわ」
お嬢様は、私の術式を理解しようとしているようだった。
「ミラも」
うん、まぁ、今行使した術式は、とても難解なものだったのでリースリット嬢には無理もない話だけれど、助手よ、あなたは人族じゃないからでしょう?
理解する必要も、つもりも無いという意味ですよね。
それに……。
「ミラは不器用ですからね」
「そうなんですの?」
「ええ、ひとつの事しかできませんから」
ミラは私を睨む黄金の瞳を、さらにじっとりと細める。
恐らくムっとしたに違いない。
しかし何も言い返せまい?
ふふ、この前、私をコかしたお礼ですよ。
モヤモヤし続けるがいい。
「あいたッ!」
蹴っ飛ばした石ころを私にあてて。
ミラは黙って歩き去った。
あいつめ、覚えてなさいよ!
そしてお嬢様にまたくすくすと笑われてしまった。
「やはり、お二人は仲がよろしいのですね」
「そうでしょうか?」
「はい。ところで……」
「はい?」
「先ほどわたくしのことを、リースと呼んでおいでではありませんでしたか?」
「あ……、それは、その……」
聞こえていたのか。
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