リースリット と 魔術基礎実習

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 あれは、お嬢様を探している時に “リースリットお嬢様” では長すぎて何度も呼ぶには苦しかったので、つい。  しかしさすがに失礼だったか。 「もうしわけ……」 「わたくし日頃から、お二人の事を羨ましく思っていましたの」 「え?」 「セナ先生は、ミラ様のことを、ミラとお呼びになりますわ」     「じょ、助手ですので」   「それでしたら、わたくしは生徒ですわ? 同じではありませんか?」     え、あ。  お嬢様は満面の笑顔だ。  しかし……、ただの屈託のない笑顔には見えない。  これはもしや、プレッシャーをかけられている!?  リース……、そう呼んで欲しいという圧なのか。  しかし相手は、王族の血縁でもある超お嬢様だ。  そんなことが許されるわけがない。    なんか変な汗が出てきました。 「よく考えますと、先生のほうが立場がお上ですのに、下のものに丁寧な呼び方をするのは、不自然ですわ?」  下!?  いや、どう考えても……。 「ね、先生?」  ずずい、とお嬢様がにじり寄ってくる。  私より少し背が低めのお嬢様と目が合う。  その瞳にはものすごい権力(パワー)が籠められているような錯覚さえ覚える。  いや錯覚なものか。    その眼でずっと見つめられると、だんだんと心が押し返されているような気持になって。    ついに。  私はそのカリスマに敗北する。 「リ、リース、さま……?」  これでよろしいだろうか。 「様は不要ですわ?」   ひぃ、よろしくなかったらしい。 「リ……-ス……?」 「はい!」  うっ。  とても怖い。
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