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ある日私は、野営地の木漏れ日に立って考え事をしていた。
――う~ん、何が良いだろうか、なんて思いつつ、空などを見上げたりしていた。
そんな折。
「先生! 先生!!」
我が生徒の元気な――というかお転婆な呼び声に視線を向ける。
「先生!!! みてください。わたくし、もう確実に魔力子を作り出せるようになりましたわ!」
息せききって私の元へやってきたリースリット嬢は、花の香ようなものを纏わせていた。
そうして、私に向けて開いた掌には、細かな砂のようなモノが乗っていた。
それは『木』と『土』の現象核の合成に成功した証であり、術式を介さない木属性の魔力は『香』という形で、土属性の魔力は『砂』という形で発現したということだった。
そして確実にできるようになったということは、私が課せていた30回連続で失敗せずに三気合成を成功させるという目標をクリアしたということに違いない。
ここの魔の領域にきて2か月。
毎日の特訓と修練を見てきた私は、もうそろそろだと思っていた。
だから、飛び上がって喜ぶということは無かった。
が――。
少しだけ、目じりが熱くなる。
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