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うう、と唸りが聞こえて。
「……やっぱり、魔術って一筋縄ではいきませんのね……」
私は思わず、ふふ、と声に出して笑ってしまった。
「まだ『術式』を習得しておられないわけですから、一筋どころか、縄を編むところにすら、辿り着いてはおられません、お嬢様?」
「では、わたくしは今いったいどこですの」
やんわり嗜虐心を乗せた私の言い回しに、ちょっと泣きそうになって尋ねられる。
「そうですね……。鳥や蝶に例えるなら。今生まれたばかりの卵、そんなところでしょうね?」
お嬢様は溜息を吐いた。
「それでは……まだ本当に鳥かどうかすら判りませんわね」
はは。
私は笑い、思う。
そうですね。
あるいは、ドラゴンの卵かもしれませんけれどね、と。
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