リースリット と 魔術基礎実習

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「わたくしの……魔術……!?」  お嬢様は、驚き、食い入るように乗り出して私の手にする『短剣』に意識を注ぐ。 「ええ。この術式には利点が沢山ありますから、きっと今後、様々な所で役立つはずです。そもそも、刃物が役に立たないはずありませんからね」  私は得意げに言いながら、「どうぞ持ってみてください」、とその短剣をお嬢様に差し出した。  それを、お嬢様は恐る恐る両手で受け取る。 「か、軽い……。まるで羽根のようですわ」 「はい。それがまず、この術式の一つ目の利点です。――魔力で作ったモノとはいえ、重量というものは存在します。けれど所詮は木の葉。非力な女性でも問題なく振るえますし、切れ味も、魔力のクオリティさえ担保できれば、名匠の業物と遜色ありません。そして武器として使うならば、投げて良し、切って良し、捨てて良し、一瞬で幾らも作れますから携帯の必要もなく、刃毀れや破損も気になりません」  しかし、結局は魔力で作った短剣だ。  注ぎ込んだ魔力が自然分解を起こし、術式を維持できない量に減少していけば、だんだんとその存在は消え失せていく。
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