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「……申し訳ないけれど、これは外させてもらおう」
私は、もはや定位置になりつつある岩に座って、今宵も作業をしていた。
ここはリース様が寝ている馬車からそれなりに遠いが、私の視力でもギリギリ見える位置であり、急げばすぐに駆け付けられる距離であり、馬車のほうからもよく目を凝らさなければこちらが見えづらいような暗さだ。
一人になるにはもってこいの環境であり、作業をするのにちょうどいい。
まあ、ミラに邪魔さえされなければ、なのだが。
というわけで。
私は、カバンから工具を取り出した。
文字を掘り終わったペンダントから、属性結晶を外すためにだ。
相変わらず、職人技で作られた美しい金属の細工は、装飾品としては一級品の代物だろう。
そのペンダントは現在、微弱な効力の属性結晶が一つはめられているが、私はそれを止めている幾つかの金属の爪を少しだけ緩めていく。
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