23人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
と思ってしばらく見ていると。
厠の方向にはいかず。
お嬢様は野営地の隅の方で掌を真っ直ぐに掲げ、何かをやり始めた。
「もしかして……自主練……? こんな時間に?」
私は度々こうして、夜に作業をしていた。
その間同じ行動を見たことは無かったが。
たまたま遭遇しなかっただけで、時折夜中も修練をしていたのだろうか?
その答えは間もなく知ることになった。
なぜなら、真っ白な人影がちょっかいをかけに行ったからだ。
その声が、真夜中の静かな空気を伝って、微かに聞こえてくる。
「今日も?」
「あ、ミラ様」
「……夜だけど?」
「そうなのですが、今日は寝付けなくて」
「そう。――だから術の?」
「はい、先生に『じゅつしきず』を頂いたのですが、上手くできませんの」
あの言葉の足らないミラと普通に話が出来ている。
お嬢様もここにきて2か月を過ぎているわけだから、慣れるのは当然か。
しかし自主練とは、感心だが、よろしくはない。
最初のコメントを投稿しよう!