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――で。
ミラはまた暇になったのかな?
私は諦めて、新しい属性結晶をはめる作業を止める。
「今度は私にかい? ミラ」
純白ドレスの少女は私の傍に来ていた。
「――意地悪」
「なんのことです?」
「アレ、ひとつ足りない」
ああ、アレですか?
「知っていますよ」
形状指定の事でしょう?
「意地悪」
「ちがいます、あれは意地悪ではなく『期待』です。お嬢様は優秀なんです。けれど、気になる部分が一つありますからね」
「何?」
それは何かって?
「『素直』な所です。――疑いをあまり持たない、と言ってもいいでしょう――」
私は待っているのです。『先生、この式図のここ、間違っていますよ』、と言ってくるのを。
少し厳しいのかもしれませんが。
優秀な人材には、すこしくらいハードモードでも構わないでしょう?
「――学問には、おかしい、と思う点に気づく力も必要ですからね」
「解る……?」
ええ、解りますよ。リース様ならば必ず。
「完成した術式は何度か目にしていますからね、それを式図に当てはめて逆算するという思考がもう少し芽生えれば、勝手に気づきますよ」
「ふうん」
「それに同罪ですからね」
「……?」
「教えなかった、あなたも……」
くすり、とミラは美形の顔を少しニヤつかせる。
「そうだね」
ええ。そうですとも。
私も微笑を返す。
さてもう満足したでしょう。
私から離れるのですミラ。
作業の邪魔です。
「――で、何してるの?」
くそぉ!
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