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リースリット と 魔術基礎実習
「えっと……確か……この辺りの筈だけれど」
ある日私は、広い通りを歩いていた。
通りの両側は高い壁で。
美しい装飾の石畳が規則正しく並ぶ道は、歩みを進める度に、カツリカツリと靴音を奏で、静かな街並みに沁み込んでいく。
植えられた木々の木漏れ日。
鳥のさえずり。
晴天の青い空。
まだ肌寒さを感じる昨今は、冬が終わり、春に差し掛かった頃合いだ。
そこを歩く私は、片手に持った地図に目を向ける。
目指す場所はすぐ近くの筈だった。
おもむろに立ち止まる。
私は、空を見上げた。
真っ青な空に燦燦と輝く太陽を、生い茂る葉の隙間から、手の影で目を覆いながら、その位置を確かめる。
少し視線を移動させれば、薄いけれども、満月も星も、見ることができる。
――太陽、月、そうして星々の位置。
「……もう少し先かな」
私は再び歩き出した。
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