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「いやあ、内藤さんって本当に親切でいい人よね。正直ここ来たばっかの頃は、……その『人柄で渡って来た人』かなって感じちゃったんだけど、実際にはめっちゃ頭切れるし!」
「あんた、それはいくら何でも失礼すぎるでしょ……。ぱっと見だけならともかく、ちょっと話したらすぐわかるじゃない」
親しい同期の言葉に思わず呆れが漏れてしまった。
「だから最初だけ! ホント反省してるもん。研修で行った部署のお局様なんて、何を訊いても無愛想で教えてくれるにしてもすっごい高飛車でさあ。しかも仕事できるわけでもないってのがね〜」
「それはあたしもまあわかるけど。あんまり甘え過ぎちゃダメだよ、美和」
与えられた仕事に詰まって真寿美にアドバイスを仰ぎ、結局ほぼ付ききりで指導を受けていた彼女。
賛同はしつつも軽く釘を刺した千恵理に、美和は神妙な顔で「うん、気をつける」と返して来た。
いくら新人教育も業務のうちとはいえ、専任でもなくその間彼女の本務が止まってしまう。
「おうちでもご主人とすごい仲良いらしいよ! 今は完全になくなったけど、ちょっと前までは家族同伴の行事には必ず来てらしたって聞いたわ。もう結婚して二十年近いみたいなのに。……やっぱ子どもいなくても続く夫婦ってそうかもね。嫌ならいつでも別れられんださからさ」
「それは、……。でも内藤さんって四十代には見えないよね。全然飾ってないのにキレイ」
本人のいないところでプライベートに触れるのは気が進まない。
とはいえ友人を正面切って責める気もなく、千恵理はそれとなく話題を逸らした。
「うん、問題ないわ。今までに注意したところが全部きっちり直ってる。もう私の下チェック要らないわね」
「あ、ありがとうございます」
恐る恐る差し出したデータをざっと確認した真寿美の言葉に、千恵理は無意識に安堵の息を吐く。
「清水さん、あなたが真剣に取り組んでるのは見ていればわかるわ。……私も最初は失敗ばかりだった。でも、みんなそれを乗り越えることで成長するのよ」
彼女の言葉に、千恵理は胸が温かくなるのを感じた。
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