蛇に睨まれたオオカミ

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咲 「え、このタイミングで寝る?」 俺の胸の中ですやすやと眠るのぞを見下ろしながら、思い切り脱力する。 教室でもこの調子ですやすや眠っているんじゃないかと、マジで心配になる。 担任は鬼怖いと有名なおがっちだから、他の生徒が何かしたりはできないと思うけれども…… のぞは小学生の頃から本当によく眠るから、油断できない。 小学校の頃は教師に起こされて、家族と勘違いしてキスをした前科がある。 ―――やめてくれ!絶対にやめてくれ……!! 小学生ならまだ赦せていたことが、中学生になると冗談では済まない。 のぞに跨ってキスをしていたクソガキの顔を思い出しただけで、腸が煮えくり返る。 最初はふざけてしていたことでも、集団になると攻撃性が増してより過激になる。 キスが股間への攻撃にシフトしたように、遠目に見ているだけの連中もそのうち手が出るんじゃないかとヒヤヒヤする。 精通を迎えた猿どもにのぞがどんな目で映っているのか、自分の視線とそう変わりないから想像に容易い。 のぞの寝顔を見下ろしながら、眠っていることをいいことに思い切り抱きしめる。 ふっくらした頬はしっとりと柔らかくて、やはり同じ男とは思えない。 思春期を迎えるとホルモンの影響で男は男らしく変化すると習ったはずなのに、のぞはなぜか毎秒かわいさが更新されていく。 生まれた瞬間から男の成長と逆向し続けるのぞに、不安しか覚えない。 子供の頃から長かった睫毛はそのままに、宝石のような緑色の瞳も、ぷっくりとした柔らかな唇も、すーっと伸びた品のいい鼻も、どれもかわいくて美しい。 丸い頬を撫でていると、くすぐったそうに軽く微笑む。 「かわいい。のぞはすっげえかわいい。だいすき。すっげえいい匂いする。」 普段は絶対に伝えられない言葉も、寝ている時にはスルスルと言葉が溢れる。 のぞの髪をかきあげながらそう囁くと、のぞの唇がわずかに動く。 寝言でも言っているのかと、耳を近づけた。 吐息のような湿った声で俺の名前を呼ばれた気がして、耳の奥がくすぐったい。 「俺の夢でも見てんの?」 瞼がしっかり閉じられたのぞにそう問いかけると、うっすらと瞼があがった。 珍しく眠りが浅かったなと焦りながら、慌ててベッドに転がす。 すると半開きの瞳で俺を捉えながら、手を伸ばしてきた。 「どした?もう起きるの?」 その手に誘われ顔を近づけると、首の後ろにのぞの腕が絡みついた。 その瞬間、のぞの顔が視界いっぱいに広がる。 俺のことを綺麗な宝石の中にぎゅっと閉じ込めると、互いの鼻先が霞めた。 「は……?」 ふにっと柔らかな感触を唇に覚えると、のぞの身体がベッドに深く沈む。 一瞬のことで頭が追いつかないのに、瞬きをする度にやたらと熱い唇や火照った耳元が全てを教えてくれた。 「ま、待って?今……?」 唇に残る感触は確かにあるが、のぞの唇を思い出すにはあまりにも儚すぎる。 寝ている時に何度もしたい願望を無理やり堪えて我慢していたのに、のぞに奪われるとは思わなかった。 「はあ、マジで……?」 寝息をたてながらすやすやと眠るのぞを見下ろしていると、太腿に引き攣るような違和感がある。 「クソ、またかよ……!」 正直者なソコが頭をあげて、のぞに挿れたいと主張している。 まだまだ子供の面影が強く、俺と同年代にはとても見えない。 ふっくらとした頬は赤ちゃんのようで、下手に触れたら壊してしまいそうな危うさがある。 全体的に華奢すぎる身体を見下ろしながら、深いため息を吐く。 のぞは男とシたいなんて、絶対に思っていない。 そのことを俺が一番知っているから、隣でずっと泣き顔を見てきたから…… どんなにだいすきでも、のぞに手は出せない。 だから、隣で守ることしかできない。 それなのに…… こんなことされたら、我慢できなくなるじゃん。 のぞの髪を撫でながら、自分の股間に手を伸ばした。 扱く度に息が上がり、痛いくらいに勃ちあがったソコが熱を帯びる。 すやすやと気持ちよさそうに眠るのぞの横で、欲に塗れた行為をすることにひどく興奮する。 いつもは小さなスマホの画面で見ることしか許されない行為なのに、のぞのキスでタガが外れてしまった。 バレたらまずいと頭の中で警報が鳴っているのに、それを無視して勝手に指が動く。 頭の中で目の前ののぞのシャツを乱暴に脱がして、白く滑らかな肌を好きなだけ撫でまわす。 小さな乳首にしゃぶりつき、ベルトを外してズボンをおろす。 パンツを脱がすと、俺と同じように勃ちあがったのぞのモノをゆっくりと扱く。 そんな卑猥な妄想を繰り広げながらも、のぞは規則正しい寝息を崩さない。 「のぞ、すき。だいすき。」 首筋に顔を近づけてのぞの匂いを思い切り吸い込むと、のぞがくすぐったそうに顔を歪める。 「ん、や……あ。」 寝言だとは分かっているのに、妙に艶めかしい表情に手の中に精液を放った。 肩で息をしながら、手の中の欲望をティッシュに包んでゴミ箱に捨てる。 俺の心情など全く気がつかない暢気なのぞが、規則正しい寝息をたてていた。 柔らかな髪を撫でながら、後悔の念に襲われる。 ―――のぞ、ごめん。こんな妄想ばっかりして、本当にごめん……。 一番傍にいる俺が抱いてはいけない感情なのに、のぞを見つめる度に欲に駆られる。 眠っているのぞに何度も謝りながら、小さな身体を抱きしめる。
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