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5
仕事の関係で俺達は職場に近い場所にそれぞれ新居を構えた。
俺の方がやや小ぶりだが、とりあえず新婚の二人が住むには充分だった。
そして週末には彼女の実家にお邪魔して、俺には無かった穏やかな家族というものを味わわせてもらっている。
なので俺はもう、実に結婚して良かったなあ、と思っている組なんだが……
「スティーブンスさんのお母様が去年お亡くなりになったでしょ?」
「ああ。あれは結構突然だったなあ、まだ若いのに」
そう、彼の母親はまだ五十も半ばで唐突に亡くなってしまった。
あの時のハロルドは酷かった。
喪主は父親がやっていたが、彼が何もしなくていい訳がないのに、足取りもよろよろとして、奥方が支える始末だった。
埋葬の時など、ほとんどその穴に身体を乗り出し、駄目だお願いだ埋めないでくれ、と大変だったのだ。
その落胆ぶりは本当に酷く、彼は何と、一ヶ月もの間事務所に出てこなくなってしまったのだ。
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