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許して殺して
俺の脚の間で動く女を見る。
俺を全部飲み込んで吸い尽くす。
気が遠くなりそうになると緩める。
その繰り返し。
地獄と極楽を行き来する。
部屋に響き渡る粘膜の摩擦音。
早くなったり遅くなったり。
それは延々と続く。
空気と混ざって漏れる俺の声が重なっている。
また遠くなりそして引き戻される。
地獄。
「ねえ、もう、許して・・・お願い」
女は聞いてくれない。
髪の毛を掴んでねじ込めば、すぐに解放されるのはわかってるけど、俺は女のやり方に委ねてしまう。
だってその女の唇は、赤くて、分厚くて、温かくて、俺に吸い付いて離れない。その中で動く生き物も、分厚くて、柔らかくて、熱くて、ザラザラと後ろを撫でて、ときどき鋭く俺をなぞる。
ずっと見ていたいのに、気が遠くなって目を閉じてしまう。
頑張って正気を保って、でも、何度も何度も、それは崩される。
「許して・・・お願い、もう、許して・・・」
泣いたのは初めてだった。
今までなったことも無い形に身体が反り返って、俺は泣きながら全てを吐き出した。
女に吸いつくされて、そこで記憶が途切れて、俺は死んだ。
気がつくと今度はもう少し上の方で女の唇が動いていた。それはだんだん登ってきて、肩や胸や首に絡む。背中やうなじに絡む。耳の裏側に絡む。
一度殺されて、蘇って俺は、またそうして地獄と極楽を行き来する。
赤くて分厚くて温かいその女の唇は、いつまでたっても俺を許してくれない。
熱くて鋭くてザラザラの舌も、全然容赦してくれない。
もう少しのところで、何度も、引き戻される。
また、俺は狂う。
お願い、許して。
早く、殺して。
End
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