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タイミングよくスマホが鳴動したのは、父もまた秀太郎のラジオを聴いていたからかもしれない。
車に標準装備されているハンズフリー機能をオンにして、「もしもしお父さん?」と応答した。
「涼香、聴いてたか?」
「秀太郎のラジオ? 聴いてたわよ。ねえ、重大発表って何のことだか知ってる?」
「オーパーツを見つけたらしい」
「ええっ⁉ 本当に?」と大声を上げてしまったけど、事実ならば凄いことだ。
父が苦々しげなのは、オーパーツ研究の弟子でもある娘婿に先を越されたからだろうか。
「おまえは何か聞いてないのか?」
「聞いてない。秀太郎とは、お互い仕事のことには一切干渉しないっていうのが長年のルールになってるの。今日、お父さんが私を呼んだのは、そのオーパーツと関係あるの?」
「ああ、おまえに渡したいものがあるんだ。あとどれくらいで着く?」
「今、海老名ジャンクションを過ぎたところだから、30分ぐらいで着くわ」
「そうか。気をつけてな」
珍しい。父が私を気遣うようなことを言うなんて。
そう思った時にはもう通話は切られていた。
秀太郎が「オーパーツを見つけた!」と興奮して旅先から電話をしてくることは、これまでにも何度もあった。
その度に一緒に喜んでは、精査した結果、偽物だと判明してガッカリするのがいつものパターンだった。
でも、今回の秀太郎は今までの彼とは違う。
先月、彼が向かったのはバミューダ諸島だった。何か耳寄りな情報を掴んだから行くことにしたのだと思ったのに、秀太郎はそれが何かを私に一言も言わずに出かけた。
帰国してからも何も言わないからてっきりまた空振りに終わったのかと思っていたのに、世紀の大発見をしたから慎重になっていたのかもしれない。
たとえオーパーツを見つけたとしても、お金にはならない。まず現地の発見者から買い取るために大金を支払っているし、秀太郎は他の誰かに譲ることはしないだろう。たとえどんなにお金を積まれたとしても。
それでは名誉が得られるかと言えば、それもない。そもそもオーパーツというもの自体が考古学者や歴史学者の間では眉唾物と見下されている節があるし、ほとんどのオーパーツが発見された時点では製造不可能と考えられても、後の解析技術の向上により論理的に説明可能になるからだ。
「ただ僕は……手に入れたいんだよ。大昔から宇宙人が地球に来ていたという証拠を」
結婚当時の秀太郎の熱心な口振りを思い出して、私は胸が熱くなった。
子どもの頃からの秀太郎の夢が叶ったのだとしたら嬉しい。
荒唐無稽な夢だと嘲笑う人もいるけど、この広い宇宙に『地球人以外の知的生命体は存在しない』と断定するのは論理的でないと私も考えているから。
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