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琥珀色の紅茶にグラニュー糖の四角い粒子がさらりと溶ける様を、イリアはぼんやりと見つめ、先ほどのことを思い出していた。
(カテリナ……別人みたいだった)
凍てつくほどの冷たい眼差しの中に殺意があった。
それはイリアの知っているカテリナと同じものとは思えないほどであり、彼女から逃げた今でも夢を見ているのではないかと思うほどだ。
カテリナが優しくシュモンを撫でている光景が思い出される。
一緒に街を回った時、パンを半分こにした時、転びそうなところを助けてくれた時。
どの表情を思い出しても穏やかな感情が現れていた。
何よりもシュモンを見つめる表情は慈愛に満ち、とても人殺しをするような人間には見えなかった。
(……どうして、カテリナは私を殺そうとしたのかしら)
ショックではあるが、無駄に考えても答えは見つからないだろう。
イリアは気持ちを切り替えるように温かい紅茶を一口飲んだ。
そして、焚火を挟んで正面に座っているミレーヌに話しかけた。
「ミレーヌはどうしてこんなところにいたの?」
ミレーヌはエリオット付きの近衛兵だ。なのにどうしてここにいるのだろうか?
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