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思い出した前世
今から十二年前。イリアが五歳の時に話は遡る。
その日、イリアは王宮のお茶会に呼ばれて王宮を訪れていた。
トリステン家は筆頭侯爵家であるため、王宮のお茶会に呼ばれることは度々あったが、イリアは幼かったため王族主催のお茶会には参加したことがなかった。
しかし今回は子供が社交を学ぶ一環で貴族の子息令嬢も多く呼ばれる比較的気楽な茶会ということで、イリアも特別に連れて行ってもらえることになった。
「父様、はやくはやく!!」
王宮は煌びやかで広く、幼いイリアにとっては夢の国の建物のように思えた。
今日のドレスは自分の若草色の瞳に合わせて鮮やかなシナバーライトグリーンのドレスである。
金の巻き毛をアップにしたイリアは自分が少し大人になった気分で屋敷を出た。
が……それも一瞬のこと。
王宮に着くと見たことのない空間に心躍らせ、父親の前を走るように歩いた。
「ねえ、父様。お城には〝いせかい〟から来た特別なものがあるんでしょ? それ見れる?」
「それは特別な部屋にあるから普通の人間は見ちゃダメなんだよ」
「えー、父様でも見れない?」
「どうだろうなぁ……」
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