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「いいんです! 私はエリオット様の側にいられれば! でも……早く婚約したいです」
アリシアがエリオットの腕に手を絡ませながら甘い声で強請るように言う。
「私もだ。……さぁ、本当に行こう。教皇も一緒に行かれますか?」
ようやくカテリナが部屋にいたことに気づいたようで、エリオットは社交辞令的な口調で同行を誘った。
二人で睦まじくしている恋人同士の雰囲気を壊すほどカテリナも無粋ではない。
「いや、我は後から行くとする」
「そうですか。では後ほど」
エリオットはそう告げると、再びアリシアに微笑みながらその腰に手を当ててエスコートし、部屋を出て行った。
部屋は一気に静寂に包まれる。
カテリナは窓ガラスに身を預け、ぼんやりと外を見つめた。
そしてふと思い出したようにポケットから一つの小瓶を取り出した。
イリアに渡そうとした飴の小瓶である。
中には飴に見えるが、実はそれに良く似た白い石が入っているのだ。
角度を変えれば、少し白色の濃い月長石にも見える。
(人の命から作られているというのに美しいものだな)
小瓶の傾きを変えれば、七色の光がキラキラと石の中で踊る。
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