262人が本棚に入れています
本棚に追加
いつしか犬はカテリナにとって友達となり、辛い日々を支えてくれる存在になっていた。
(なのに……殺されてしまった……)
貴族に吠えた。
たったそれだけで「自分に楯突いた」と言って貴族は犬を斬り殺したのだ。
助けることもできず、幼いカテリナはそれを見つめるしかなかった。
地面に広がる赤いシミを息を止めたまま凝視してカテリナは佇んだことを今でも覚えている。
あの時は犬を助けられなかった。
だから大人になり、貴族をも従えられる権力を手に入れた今、犬を助けるという行為は切り殺された親友への贖罪に感じたのかもしれない。
「少しほだされたか……?」
イリアが自分を良い人だと言ってあまりにも真っ直ぐな目で見るから、思い出さなくていい過去を思い出し、シュモンを引き取ってしまった。
そして極めつけはあの場でイリアを見逃した。
「だが……」
カテリナは小さく呟き、目を瞑る。
そして先ほどのアリシアとエリオットのことを思い出す。
二人の仲は疑いようもなく、誰の目から見ても愛し合っている。
最初のコメントを投稿しよう!