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死の森
イリアたちは森に逃げ込むとすぐに異変に気づいた。
森に入りまだ少ししか進んでないのに腐卵臭が漂っている。
多分これは硫黄の匂いだ。
どこからか硫黄のガスが噴き出しているのだろう。
(硫黄……ということは火山? でもこの辺りに火山があったかしら?)
硫黄独特の腐ったようなむせ返る匂いに思わず顔を顰め、口元を手で覆った。
これをまともに吸い続けていたら、確かに死亡するだろう。
だからこそ、この森は「死の森」と呼ばれているのだろう。
たぶんこの世界の人はこの硫黄ガスの正体が分からず、森に入ると死ぬという事実から、呪いで死ぬと言われているのかもしれない。
「はぁ……はぁ……なんだ、この匂いは。吐きそうだ」
「ちょっと待って。このガスを嗅いでたら死んじゃう。今浄化するから」
イリアは手をゆったりと広げて集中する。
そして大地にと森の上空に温度差を作ると、上空の空気が一気に降りてきた。
びゅうという音がして一瞬、服がばさりと揺れるが、すぐにその風は緩やかなものになってイリアたちを包んだ。
「で、この魔道具で術式を固定して……はい、簡易酸素ボンベの完成」
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