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『本当に愛してるのは貴方だけよ』
悪夢から目が覚める
現実なのか夢なのか判断するのに少し時間がかかった
「母さん…」
リビングからは結城さんと母さんの笑い声が聞こえてくる
また一日が始まる
「おはよう…ございます」
「海斗くんおはよう」
「おはよう海斗」
この二人は三ヶ月前に結婚したばかりの幸せ新婚生活中だが
既に俺の母さんは不倫をしている
そして結城さんはそれを見て見ぬふりをしている
上辺では幸せな家族だが内側から見れば不幸な家族
「海斗くん今日学校休みなんだって」
「はい。結城さんもお仕事休みだって母さんから聞きました」
「もう君のお父さんなんだから結城呼びはやめにしないかい」
考えてみれば俺も母さんも結城になったのだ
「まだ慣れなくて」
「ゆっくりでいいよ。徐々になれればいいから」
いつ不倫が公になって別れるかも分からないのに結城さんを父さんと呼べなかった
結城さんも俺と同い歳の娘がいると聞いた
離婚した理由は少し濁されたからそれ以上深くは聞かなかった
再婚同士不倫は多めに見ているのだろうか
「海斗は今日何するの?」
「部屋でゲームしてる」
こんな不気味な二人と貴重な休日を過ごすのは嫌だった
「海斗くん少し話をしないかい?」
母さんは空気を読んだのかスーパーに行くと家を出て行った
「話ってなんですか?」
「華の不倫のことだよ」
母さんの名前久々に聞いた
「気づいてらしたんですね」
「以前の離婚も不倫が原因でしょうか」
「概ね母さんが離婚する理由は不倫だと俺は思ってますよ」
息子である俺に探りをいれてるのか?
「結城さんも母さんと離婚するんですか?」
「しないですよ」
結城さんはどこか今までの再婚相手とは違った
「華さんが僕を嫌いだ消えてくれって言わない限り君の家族です」
こんな優しい人がなんで離婚してしまったんだろう
元奥さんとの間に何があったんだ
それに俺と同い歳の子がいると言ってたが、なんで結城さんについて行かなかったんだろうか
「僕はこれからも見て見ぬふりをします。君はどうしますか」
「どういうことですか」
「君はお母さんに不倫は良くないと言える立場です」
「結城さんが初めてではないので大丈夫です」
母さんの再婚は八回目俺には九人の父さんがいる
「僕は最後の君のお父さんになりたい。頼ってくれ僕を」
俺の実の父さんの記憶はもうない
「ありがとうございます。」
結城さんと話した後母さんが帰ってきた
「隼人さん!!」
慌てたような声で母さんは帰ってきた
「どうしたのですか」
「娘さんが来てます」
母さんの言葉で俺は玄関まで走った
そこには制服を着て家出でもしてきたのかと思う荷物を持っている少女がいた
「結。どうしたんですか」
「お願いします」
結城さんの娘さんは深くお辞儀をしている
俺と同い歳には見えない礼儀正しさと美しさに俺は目を奪われた
「一ヶ月ほどこの家で過ごさせてください。」
「雪さんはどうしたのですか」
「私が家を出たのは了承してます。連絡は入れないで大丈夫です。それに、生活費もしっかりお支払いします。」
生活費…
高校生が言うような言葉じゃない
そんな親子二人の会話を母さんが破った
「結ちゃんだっけ?お父さんしか頼れるところがなかったのよね」
母さんは結城さんの娘の手をとった
まるで自分のやってる事に正当性でもつけるかのように
「わかりました。生活費はいりません。」
「いえ、お支払いします。お父さんの新しい生活をめちゃくちゃにしてしまうかもしれないですから」
なんで敬語なのかとか友達を頼ることはできなかったのかとか喋りたいことは沢山あった
「私の息子の結城海斗。結ちゃんと同い歳だから仲良くしてあげて」
「あっ、桐ヶ谷結です。一ヶ月お世話になります」
俺は後ずさりした後会釈して自分の部屋に行った
結城さんの娘は母さんと結城さんに連れられリビングに行った
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