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輝く
「え?」
ガロンさん?
「陛下は、まだ独身ですし、少々ぶっきらぼうで言葉が足りないことも多いですが、優しいですし……」
「いえ、あの、そんな」
「あら、陛下はお嫌ですか?」
「いえ、いやと言うか……」
ガロンさんは確かにいい人だけれど。さすがに直属の上司だし、それに失恋したばかりだし。
「では、いやではない?」
「……そうですね」
嫌ではない。間違いなく。
「よかったです。でしたら、うちの陛下にもまだまだチャンスがあるということですね」
……チャンスも何も。
「ガロンさんは、大層おもてになるのでは?」
「それが全く。あの通り、女性にあまり縁のある生活をしておいでではないのですよね」
……そうだったわ。
ガロンさんは、女性と歩き慣れてないって言ってた。
「なので! 私といたしましては、ぜひともラファリア様と——」
「ところで!! ユグと旦那様の出会いは、どんな風だったんですか?」
強引に話題を変えると、ユグは、途端に顔を赤くした。
「……ユグ?」
「あぁ、はい。私とマギリの出会いは——」
赤くなりながら、もごもごとユグは話し出す。
そのエピソードに耳を傾けているうちに、夜は更けて行った。
◇◇◇
翌朝。
「……ん」
大きな欠伸をして、目を覚ます。
すると、見慣れない天井があった。
「!?」
驚いてきょろきょろと辺りを見回していると、
「おはようございます、ラファリア様」
「……はい。おはようございます、ユグ」
ユグがやってきた。
そうだ、私はアドルリア王国の花奏師をやめて、魔国の魔獣の世話係になったんだった。
「昨夜は、眠れましたか?」
「はい。ぐっすりと」
夢も見ないほど、深く眠った。
「それはよかった。……陛下から朝食の誘いが来ておられますが、いかがされますか?」
「……ガロンさんから」
「はい。断っても問題はないとのことです」
働く上でガロンさんとコミュニケーションをとっておくことは大事だろうし、私個人としても、ガロンさんがどんな人なのか興味がある。
「わかりました。お受けしてください」
「かしこまりました」
それに、ひとりで食べるよりも、ずっと美味しいものね。
支度を整え、朝食会が行われる食事の間に行くと——。
「あぁ、おはよう。ラファリア」
そこには、きらきら輝く魔王陛下がいた。
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