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魔法使い
ガロンさん、なんて気安く呼びかけるのも躊躇われるようなほど、正装のガロンさんは輝いて見えた。
そういえば出会った時はお忍びだったから、一国の王らしい服装はしていなかった。
質のいい服ではあったけれど、それでも今とは全然違う。
服装だけじゃなくて、オーラのようなものも、控えめにするようにしてたんじゃないかしら。いえ、オーラを控えめにするって具体的にどうするのかわからないけれど。
「……ラファリア?」
いけない、ガロンさんに返事を返していなかった。
あまりの眩さに、若干目を細めつつ、挨拶を返す。
「おはようございます、ガロンさん。朝食会にお招きくださり、ありがとうございます」
「こちらこそ、参加してくれてありがとう」
ふっと微笑んだガロンさんからまた星が放たれる。
うっ、眩しい!
更に目を細めつつ、私も席に座る。今の私、絶対糸目みたいになってるわよね。
「ラファリア? 目の調子が悪いのか?」
ガロンさんは、心配そうにそう尋ねてくれたけれど。
これは、なんと答えるのが正解だろう。
「いえ……その、ガロンさんの……」
「あぁ」
「正装を初めて見たので、なんといいますか」
ガロンさんはそこで表情を曇らせた。
「似合っていない?」
そんなまさか!
勢いよく首を振る。
「いいえ、むしろ……その似合われすぎていて、眩しく見えるのです」
あぁ、正直に言っちゃった。
「……」
ガロンさんは、急に黙って、俯いた。
失礼だったかしら?
……どうしよう。
「あの……」
無言にたえかねた私が、声をかけようとした時——。
「!」
ガロンさんが顔を上げた。
その顔は一目でわかるほど、真っ赤だった。
怒ってる? 怒ってるわよね。
「不快にさせて、もうしわ——」
「不快じゃない!」
「!」
大きな声で否定され、思わず肩を揺らす。
「いや、大きな声をだして、悪かった。……不快じゃなくて、嬉しかったんだ。だが、どんな顔をしていいかわからず……」
そっか。さっきの顔は照れていたのね。
……良かった。
「……ラファリア、あなたは、やっぱり魔法使いだ」
小さな声で漏らされた言葉は、私の耳に届いた。
「え?」
「あなたの言葉は、俺の余裕をすぐに無くさせる」
真っ赤な顔のまま、告げられた言葉。
「!?」
まるで、砂糖菓子のような甘さを含んでいて。
その甘さは、レガレス陛下がマーガレット様の名前を呼んだときを思い出させた。
頭に浮かんだ考えを否定するように、首を振る。
「そ、それは、ガロンさんが、女性慣れしてないから……」
そうだ。
私がどう、とかじゃなくて、女性に耐性がないから。そうに違いない。
「だが、ユグにそう言われてもどうともならない自信がある」
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