竜の見る夢

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竜の見る夢

(レガレス視点)  夢を、見る。   薄暗い闇が立ち込めていて、辺りが見通せない。 真っ暗な中に、ただ、立っていた。 「……悲しい」  誰かの声がした。  ……悲しい?  その声は、聞き覚えがある声のような気がするのに、誰の声か、思い出せない。 「……苦しい」  また、同じ誰かの声がした。  聞いてるこちらが、胸騒ぎがするほど、苦しそうな声だった。 「……どうして」  今度は、嘆き。  あまりにも切なく震えるその声に、私は我慢できず、闇に問いかけた。 「なぜ……なぜ、君は、こんなにも悲しくて苦しい思いをしているんだ?」  理由を聞きたかった。  知りたかった。  助けたかった。  その思いで問うた言葉は、ゆっくりと闇に溶けた。  返答はない。  所詮は、夢。だから、闇から返事がなくてもおかしくない。 そう頭ではわかっているのに、口が言うことを聞かず、もう一度繰り返す。 「何が、そこまで嘆かせる?」 「……なに、が?」 「!」  息を呑む。どうせ、また返答はないだろうと思っていた。 「……本当にわからないの?」  そう聞こえた瞬間、私の中に、声の主の感情が、どっと押し寄せてくるような気がした。  ……渇望、悲哀、絶望、そして、失望。  どれも立っていられないほど強いものを感じたが、中でも一番大きかったのは、失望だった。  ……だが。 「……わからない」  何が、そこまで失望させるのか。 「あなたが、大切にしないから……」  大切にしない?  それも、私が……?  一体どういうことだ? 「本当に、わからないの?」  先ほどと、同じ。けれど、怒気を含んだその言葉。  一国の王であるはずの自分が怯んでしまうほど、強い怒りが込められていた。 「……わか、らない」 「わかりたくない、の間違いでしょう?」  刃のような言葉の鋭さに、は、と息を吞んだ。  私が、大切にしなかったこと。  私が――目を背けていること。 「夢除けをされているから……夢でも会えない」  大きなため息とともに吐き出されたのは、落胆だった。 「夢除け?」 「愚かなひと。……まだわからないのね」  急に、闇が退き、辺りが眩く光り始める。  その光の先にあったのは……。 「……陛下!!」 「!!!!!!!!!」  急に視界が明るくなる。 「……私は」  何を、していた?  何を、見ていた? 「陛下、心配いたしました」  そういって瞳を潤ませながら、抱き着いてきたのは、誰だ? 「マーガレット……?」  そう、マーガレットだ。  私があの日、であったきみ。  私が、愛しく思う……愛しく思うべききみ。 「……?」  思うべき?  自分の中で浮かんだ言葉に内心で首を傾げる。 「陛下?」  よほど、変な顔をしていたのか、マーガレットはとても心配そうな顔をしていた。 「陛下、ずいぶんお疲れだったのですね。もう半日ずっと目を覚まされなかったのですよ」
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