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新しい居場所
(ラファリア視点)
出かけよう、と決めたものの。
「……まずは、ユグに聞いてみないと」
出かけるにしても、何も知らない所へ一人で行くよりも、誰か詳しい人と一緒の方が心強い。
早速ベルで、ユグを呼び出し、ユグに尋ねる。
「ユグ、お願いがあるのですが……」
「いかがなさいましたか?」
「魔国のことをもっと知りたいので、出かけたいと思うのですが、一緒についてきてもらえませんか?」
ユグは、きょとんとした顔をした後、嬉しそうに笑った。
「はい、もちろんです! 案内役に選んでいただけて光栄です!」
ユグは少々お待ちくださいね、と、どこかに消え、すぐにまたやってきた。
「それでは、準備をいたしましょうか!」
キラキラと輝く青い瞳で、見つめられ、首を傾げる。
「……ユグ?」
「だって、ラファリア様は、この国に来て、初めてのお出かけでしょう?」
……その通りなので、頷く。
「それなのに、お仕事のときと同じ格好だなんて、駄目ですよ! 今日のお仕事は、もう終わったのだったら、新たな服に着替えてしまわないと!」
「……そういうものですか?」
ユグは、ええもちろん、と大きく頷く。
「プライベートとお仕事は、きっちり分ける。これは、とっても大事なことですよ、ラファリア様!!」
「……確かにそうですね」
花奏師だった頃は、あまりプライベートという概念がなかったから、新鮮だわ。
「あ、でも、『鈴』は大事な証なので、持って行った方がよろしいかと。……ところで、お洋服は、私の一押しを選んだのですが、こちらのピンクと水色とどちらがよろしいですか?」
ユグは楽しそうに、くるっと回りながら、ピンクのワンピースと水色のワンピースを見せる。
「……そうですね」
ピンクのワンピースを見ると、少しだけ……花奏師だった頃の制服を思い出させた。
聖花のことは今でも大好きだけど、今の私は、闇獣の世話係だ。
……だから。
「水色で、お願いしてもいいですか?」
「はい、もちろんです!」
ユグに手伝ってもらって、支度を整え、魔王城を出る。
「……わぁ」
初めて見る魔王城の外観は、思った以上に大きかった。
……アドルリアよりも大きいかもしれない。
おもわず、感嘆の声を上げると、ユグがふふ、と微笑んだ。
「驚きましたか? 魔国の城は、六国の中でも随一の大きさだそうです」
「そうなんですね!」
確かに、この大きさなら納得だ。
また時間があるときに、城の中も探検してみたいわ。
自分の中に生まれた新たな欲望に微笑んで、足を踏み出す。
魔国。これからの私の居場所となる国。
それは、どんなところかしら。
「有名な観光地などもございますが……いかがされますか?」
「……そうですね」
観光地、もいいけれど。
やっぱり。
「この国の人たちの生活が知りたいです」
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