親書

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 ……大事な話。  なんだろう。昨日のガロンさんの体調は良くなかったけど、その件かしら。    違う気がする。  私に話すってことは、もっと仕事に関係することよね。  たとえば、アギノの異変があったとか?  どきどきしながら、支度を終えて、食事の間へ。  いつも通り、先に席に着いているガロンさんは、難しい顔をしていた。 「……おはようございます」 「あぁ、おはよう。ラファリア」  私に気づくと、顔を上げて微笑んではくれたけれど。  いつもに比べて、顔が強張っているようにも見える。  とりあえず、席に座り、ガロンさんの言葉を待つ。 「ラファリア、ユグから聞いたと思うが……」 「はい。大事な話がある……んですよね?」  尋ね返すと、ガロンさんは頷き、息を吐き出した。 「俺は……あなたには、末長くアギノの世話係をしてもらいたいと思っている」  ……ということは、他の貴族の反発かしら。  闇獣の世話係は、公爵と同等の地位に就く。  私はもともと他国の人間だし、反発されるのは、仕方がない。 「……私の過去が問題なら」 「いや、違う。……ある意味ではあっているが」  ある意味では、あっている?  首を傾げると、ガロンさんは私を見つめた。  星のような金の瞳は、まっすぐに私を映している。 「あなたは、アドルリアの花奏師だっただろう?」 「! はい」  私は、アドルリアの花奏師だった。  それは、間違いない。  試験にもちゃんと合格し、資格証も貰った。 「これが、昨夜届いた」  ガロンさんは、懐から一通の手紙を見せた。  その手紙の蝋は……。 「アドルリア王国から、ですか?」  アドルリア王国が国王、レガレス陛下のものだった。 「……あぁ」  アドルリア王国から、魔国に親書が……。 「ここに書いてある内容によると、あなたを一週間、アドルリア王国に滞在させて欲しいとのことだ」
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