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新しい生活の始まり
——翌朝。
「うーん」
大きく伸びをして、目を覚ます。
お酒を飲んだわりには、倦怠感や頭の痛みなどもなく、すっきりとした目覚めだ。
今日から、新しい生活の始まりね。
とりあえず、支度をしよう。
朝の支度を終えて、王城を出る時に持ってきた荷物が入った鞄を持つ。
そこで扉がノックされた。
「起きたか?」
ガロンさんの声だわ。
「はい。丁度、出立の準備ができたところです」
「なら入るぞ」
「はい」
ガロンさんは部屋に入ると、手を差し出した。
「……あの?」
「重いだろう。……荷物をかせ」
それはなんだか申し訳ない。けれど、ガロンさんの無言の圧力に負けて、しぶしぶ、荷物を差し出す。
「ありがとうございます」
「……あぁ」
小さく頷きガロンさんは、ふと、私の方を見た。
「今日は、昨日とは違う髪型なんだな。……似合ってる」
「!」
まさか、気づかれるなんて思ってなかった。
「は、はい……ありがとうございます」
なんとなく気恥ずかしい空気を感じつつ、ガロンさんの後に続く。
「宿代は、前払いで支払っているから、このまま出るぞ」
「はい!」
ガロンさんは、足が長い。
だから、必然的に小走りになりながら、ついていくと、ガロンさんが立ち止まった。
「ガロンさん?」
「……いや。悪かった。女性とあまり歩き慣れていない……とは言い訳にもならないが」
そう言って、今度は私に合わせた歩調になる。
「ありがとうございます」
この優しい人のもとで、今度から働くんだ。
そう思うと自然と笑みがこぼれた。
「なぁ、ラファリア。あなたは——」
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