09 BLACK

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ーーーーーーーーーーーーーーーー 「やっば、超懐かしいんだけど」  そして今、久しぶりに帰省した麻友とあの日と同じスタバにいる。  同級生の結婚式の二次会のあと、二人で抜け出してきたのだ。  アルコールも入って、二人ともすっかり上機嫌だ。 「中学生にスタバは流石に敷居高いよね」 「場違い感半端なかったもん」 「しかも地元で初出店でさ。こんなど田舎のショッピングモールによく作ったよね」 「いや、ほんとほんと」  ふふっと小さく笑って、麻友はブラックコーヒーの入ったカップを傾けた。 「私ね、あの日、陽子に言えなかった事があるんだ」  カフェミストの泡を上唇にのっけたまま、私は瞬きをした。  麻友のすらりとした指先には、こっくりとした色味のボルドーのネイルが彩られていた。 「陽子のこと、親友だと思ってるって伝えたかった」  気恥ずかしそうにそんな事を言う麻友に、私は思わず抱きついた。 「私もぉっ、ずっと親友だと思ってる」 「ほんとうに?」 「麻友ちゃんと親友になれた事は、私の人生最大の功績だよ」 「大袈裟だなぁ。っていうか、麻友ちゃんって呼び方懐かしい」  「ついてるよ」と言って、麻友が紙ナプキンを差し出してくる。  私はそれを受け取って、唇を拭いながらくぐもった声で呟いた。 「あの時さ、黒い下着買うなんて言い出すから、私より先に大人になっちゃうみたいでショックだったよ」  言ってから急に気恥ずかしくなって、顔を逸らしてカップに口をつける。  麻友はにやりと口の端を吊り上げて悪戯っぽく笑うと、着ているシフォン素材のワンピースの襟元を横にぐいっと引っ張って見せた。 「ちなみに、今日のは赤」  不意打ちを喰らった私がコーヒーを口から噴き出すのは、その5秒後だった。 END.
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