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「待たせてごめん」
銀色のビニール袋を鞄に仕舞いながら、麻友ちゃんがこちらに歩み寄ってくる。
「う、ううん。全然」
「どうしたの、なんか変じゃない?」
「別に……なんでもないよ」
萎んでいく弱々しい語尾に、麻友ちゃんが眉を顰める。
堪えきれなくて、私は誤魔化すように先を歩き始めた。
「お小遣い貯めてるって言ってたもんね。これ買うために貯金してたんだね」
「ううん、違うよ」
「そうなの?」
しばらく歩いた先、自転車売り場の目の前で振り向くと、視線の先で麻友ちゃんが鞄の肩紐をぎゅっと握りしめていた。
「私ね……陽子ちゃんと一緒に行ってみたかったところがあるの」
耳まで赤く染めて俯きがちにそう言う彼女の顔は、私が初めてみた表情だった。
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