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「陽子ちゃん、放課後付き合ってくんない?」
広げた雑誌の広告ページに写るモデルの写真をぼんやり眺めていたら、声がして顔を上げた。
教室の中、前の席に座る麻友ちゃんが椅子の背もたれに腕をかけて振り向きながらこちらを見てる。
私は慌ててページを閉じた。
「いいよ。どこ行くの?」
「イオン行きたい」
中学生になって初めて出来た友達がこの麻友ちゃんだ。
背中まで伸びた長い艶やかな黒髪が綺麗で、絶対にこの子と仲良くなりたいと入学初日から思っていた。
切れ長のシュッとした目と上品そうな高い鼻筋、極めて目立つ存在という訳ではないけど麻友ちゃんは綺麗な子だった。
いわゆる陽キャのグループの子に話し掛けられても決して群れようとはしない、無愛想ではないけれど誘いをするりと交わして輪には加わらない、そんなタイプだ。
入学式の翌日、下校時刻の生徒玄関で思い切って「一緒に帰ろう」と声を掛けて以来、私と麻友ちゃんは友達になった。
放課後にこうして近所のイオンに行ったり、休みの日に待ち合わせてゲーセンや買い物にも行くようになった。
休みの日にまで会ってるんだから、友達だと言っても良いと思う。
私は内心、親友だと思ってるけど……違うって言われたらショックだから、口に出して確認したことはまだない。
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