プロローグ

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プロローグ

 黒宮(くろみや)琴鳴(ことな)には影がない。  彼女はいつものように、みんなと挨拶を交わしながら窓側の自分の席に座った。僕はそれを対角の廊下側の席から見ている。  夏の陽が射し込み発光パネルのような窓が並び、その手前に同級生達の影絵が並ぶ。でも黒宮さんの横顔には一点の陰りもなく、綺麗に並んだ白い睫毛の一本一本までもが見てとれた。それは彼女が光に照らせれることなく、自ら光っているからだ。  産毛もなく潤った白い肌。長い髪と大きな瞳は、限りなく白に近いグレー。彼女自身を形成する中に黒と言えるものはない。いや。と、下着の中を想像してしまい、思わずゴクリと喉が鳴った。  僕にはどう見ても彼女は光そのもだった。ここまで言うと愛だ恋だと言われるのがおちだが、と言ってる訳じゃない。を言っているだけだ。  学校の誰もが彼女を知っている。でも誰もが不自然なほど普通に接していた。それは僕自身も例外じゃなかった。
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