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「価値とかわかんないけど。黒宮さんは初めて見た時から光って見えてたよ。みんなには黙ってるけど、嘘じゃない」  僕はポケットを探りながら、笑える話はないかと言葉を探した。 「そうそう。前に、匂いで雨が降るのがわかるって言ってたでしょ。俺さ。実は光で黒宮さんが来るのがわかっちゃうんだ。気配って言うか光で」  上手く笑顔は作れそうもなかったから、下を向いてジュースを取りながら声を出して笑った。それと一緒に自動販売機から音楽が流れた。 「すごい! すごいよ」  手を叩いて興奮する黒宮さんの声に顔を上げると、自動販売機のパネルに数字の七が三つ並んでいた。 「嘘! 当たり? これ当たることあるの?」  確認なんてしないで立ち去るくらい期待もなく、数も少ない当たり付き自動販売機。始めて目にする当たりに、僕らは興奮を隠せなかった。 「衛藤くん、凄いんだけど!」 「ヤバイ夏休みの運、使い果たしたかも! どれがいい。好きなの選んで」 「いいの? じゃあ、衛藤くんが選んでプレゼントしてよ」 「えーと、じゃあ、これでいい?」 「うん」  落ちてきた当たりのジュースを黒宮さんに手渡した。少し手が触れたけど気付かないフリをした。 「ありがとう! 今日は一番の想い出になったなー。さっきの話も合わせて」 「それは言いすぎでしょ。て、さっきの話?」 「私が来るのが分かるって話」 「ああ。この当たりで上書きしてくれー」 「ふふ。だめー。私が雨を感じるのがペトリコールなら、衛藤くんが私を感じるのはクロコロールだね」
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