5

1/2
前へ
/16ページ
次へ

5

 夏休みも後半、地元神社の夏祭りが一週間後に迫った日だった。喫茶店をやっている友達の家で、同じクラスの男女で集まって宿題をすることになった。僕は真白と黒宮さん三人で一緒の場所に居たことがなかった。いつも偶然どちらかと居合わせるだけだったからだ。だから今回は一緒になるんじゃないかと、少しドキドキしていた。 「あれ? 黒宮さん誘たんじゃないの?」  真白が真っ先に気が付いてキョロキョロした。 「それが、黒宮さん引っ越したんだって東京に」  それには、みんなが驚いた。夏休み中の事で、誰も知らなかったからだ。 「光矢仲良かったじゃない。なんにも聞いてないの? ホントに?」  同じように驚く僕に視線が集まった。でも知らなかったと答えることしかできなかった。 「私のお父さんが、知ってるお好み焼き屋さんから聞いたんだって。最後に家族で店に来たって」  あの日だと僕は思った。黒宮さんが一番の想い出だと言った日。最高だと笑った日。あの時、もう東京に行く事は決まっていたんだろうか。もしかしたら、入学した時から決まっていたのかもしれない。  あとは宿題をやると言うより、夏祭りの日に何をするかで盛り上がった。なぜか、みんなとの話しにも集中できず、僕はノートの隅に意味不明な図形を描いていた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加