八年後

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八年後

 空気の純度が高く感じる年の瀬。五年ぶりの帰省だった。  高校時代に横断歩道で倒れた俺は、検査を重ね網膜色素変性(もうまくしきそへんせい)という難病だと診断された。今は昼間に色付きの眼鏡をするだけで生活に支障はなかった。 『目の内側を覆っている網膜て組織があってね。そこがちょっと傷付いてるみたいなんだ。凄く眩しくなったり、夜は見えにくくなったり、症状には個人差があるから。進行すると視野が狭くなったりするから、肩や足をよくぶつけるようになったら、すぐに言うんだよ』  あの時の医者は随分と優しい言い方をしたものだと今なら思う。 『白いものは全部、眩しく見えますか?』 『光が当たっていない物は眩しくはならないよ』  自分の病気の事より、黒宮さんが脳裏をよぎって質問をしたけれど、納得のゆく答えは得られなかった。  それから高校を卒業するまで、真白の「フェアじゃない気がするけど」と言う謎ワードで始まった告白を受けて、俺と真白は付き合った。  他県の大学に入り地元を離れると、そのまま就職して戻ることもなかった。そんな中、半年前に真白の結婚式で再会した高校時代の仲間と内輪同窓会をやろうと盛り上がり、そのまま話が進んで決行となった。場所は仲間のひとりが経営している居酒屋で、かつてお好み焼き屋だった場所だった。 「真白は二次会から来るってさ」 「なーなー。本命の黒宮さんは?」 「なによ本命って。仕事終わったら来るって言ってたけど、忙しんじゃない」 「なんだよ楽しみにしてたのにー」 「黒宮さん、白くて綺麗だったもんね」  各々の近況報告も終わり、地元に残っていた二人の幹事を中心に、話題は黒宮さんへと移っていった。
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