八年後

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 どうやら白くて綺麗で近寄りがたいが、みんなの共通認識だったようだ。近寄りがたいは、過去の噂も相まってだろう。光って見えていたのは俺だけのようだった。それは病気だったから。ただそれだけの事だったのかもしれない。 「今、芸能事務所でアイドルグループのマネージャーやってるんだって」  俺は少し安心していた。黒宮さんしかできない仕事のように思えたからだ。活動の中での悩みや相談、親御さんとの交渉もしているかもしれない。きっとメンバーの盾となる存在だろう。  居酒屋での会が終わり、二件目呑みに行く人やカラオケに行く人で別れた。俺は友達がやっている喫茶店に行って、まったりするグループだ。 「じゃあ真白も来てるし先言ってるねー」 「ああ、すぐ行くー」  路地を抜けて喫茶店のあるアーケードの方へ行くみんなに手を振って、俺は大通り側にある自動販売機に向かった。酔い覚ましのジュースが飲みたいのと、懐かしさもあった。  ジュースを手に取ると自動販売機から音楽が流れた。 「マジか」  当たりのあたたかい缶を取り出した俺は、何気なく大通りに顔を向けた。そして一瞬自分の目を疑ってしまった。でもそれは間違いようがなかった。 「クロコロール……」  路地の先。表通りへと繋がる駅側の角から、ぼんやりと光が見えた。俺は夜空に向かって白い息を吐くと、確信をもって表通りに向かって歩き出した。 <Fin>
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