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「もう大丈夫そうだね。雨」  見上げれば確かに細くなった雨は、勢いも数も減り、もうやみそうだ。そう言えば黒宮さんは僕を誘う時に「途中まで入りなよ」と言った。それは分かれ道までだと思っていたけど、まさか雨が止むまでだったんだろうか。 「黒宮さん、どうして雨が降るってわかったの?」 「雨の匂いがしたからだよ?」 「雨の匂い?」 「するでしょ? 降りそうだなーて匂い。ペトリコールて言うらしいよ。なんか可愛くない?」 「うーん。雨が降り始めたら、なんか嫌な臭いはするけど」  何か言葉を口にしながら、僕は雨上がりに光る黒宮さんの笑顔に、虹ができそうだな。なんて考えていた。僕が言った事の方がペトリコールだと知ったのは数年後のことだ。
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