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 立ち止まって慌てて真白の手を離した。真白は前屈みなって膝に手をあて息をした。 「ご、ごめん! 足、大丈夫?」  無理に引っ張って、下駄の鼻緒で怪我をさせてしまったんじゃないかと、しゃがみこんで真白の足元を覗き込んだ。薄ピンク色の小さな爪が、鼻緒に沿って並んでいた。 「はあ、はあ。もう、急だよ光矢(こうや)」 「ほんとにごめん! 曲がり角が」 「わかってるよ」 「え?」  黒宮さんの光が真白にも見えているんだと僕は驚いた。 「橋を渡ったら着いちゃうから、遠回りしたかったんでしょ? 手を繋いで」 「え。それは」 「しょうがないなー。勇気に免じて許してあげよう。行こ」  今度は真白が僕の手を握った。僕は急に暑さを感じて、それから家に帰るまでの事を、よく覚えていなかった。
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