美人アドバイザー菜々緒様

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美人アドバイザー菜々緒様

 正義の味方をして、ついに今年で十五年目に突入だ。  物心ついた頃から正義の味方をしているので、結構長くなったものだ。  三歳の頃からずっと仮面をかぶって正義の味方の真似事をしていた。  本格的に正義の味方になったのは五歳の時だ。  まだ愛車のママチャリ1号には補助輪が取り付けてあった。  今年、二十歳になったので目出度(めでた)く十五周年だ。  ここは東京都の外れにある田無市(タムし)。  東京都とは言っても田無市(タムし)は都下だ。  駅前の繁華街を離れれば、ほぼ田んぼだらけののどかな田園都市が広がっていた。  わずかに開発の進んだ駅前にあるビルの四階に結婚相談所『ハッピー・パラダイス』があった。  ママの紹介でボクは、この『ハッピーパラダイス』に入会した。  ボクの目の前には婚活アドバイザーの美女がソファに腰かけていた。    メガネを掛けた菜々緒風の美女だ。  名前は覚えていないが、ボクは勝手に『菜々緒様』と名づけた。  今にも巨乳がこぼれ落ちそうだ。  オッパイ星人には堪らない。  ドキドキしてくるほど美しく可憐な美人アドバイザーだ。  密かにボクはこの菜々緒様に憧れていた。  いやひと目惚れと言っても過言ではない。  この長く美しいでボクの熱くたぎった股間のX《エックス》カリバーをグリグリと踏んづけてほしい。  ドMのボクは、そんな妄想を思い浮かべながら緊張した面持ちで菜々緒様の前に座っていた。  緊張で顔が引きつっているようだ。  仮面をかぶっているため他人から顔色はわからないのだが。  悪の秘密結社の怪人を前にするより、 数倍も緊張していた。  無理もない。ボクはめっぽう美女には弱いタイプの正義の味方だ。  美女を相手にするだけでドキドキして汗が吹き出してきた。  だが仮面をかぶっているので、菜々緒様にはわからないだろう。  今日のために用意した特注品の仮面だ。  カッコ良いので、一週間前からかぶりっぱなしだ。  今日だって、颯爽とママチャリに乗って走っていると女子高生たちに指を差されて笑われた。  無理もあるまい。  このカッコ良い仮面を見れば、女子高生は『キャーキャー』言って歓声を上げる。  まさに注目の的だ。  人気者のツラいところだろう。  ボクはママに用意して貰ったハンカチで頬を流れる汗を拭った。    もちろん仮面をかぶっているので、まったく意味はなかった。    
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