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職業、正義の味方!
美人アドバイザーの菜々緒様が見せつけるように長い脚を組みかえた。
まるで往年のシャロン・ストーンのように艶めかしい。
つい身を乗り出して覗き込んでしまった。
「ええェッと、あなたが美剣アスカさんですね」
菜々緒様が怪訝な眼差しでボクの仮面を見つめた。
「あッ、ハイ、そうなんですが……」
ボクは颯爽と立ち上がった。
「ボクの名前はジャスティス・キッド。美剣アスカは世を忍ぶ仮の名前だ!」
カッコよくポーズを決めた。
子どもたちにはヒーローショーで好評だ。
何度もアンコールをせがまれた。
「いやいや、そういうのは良いから」
しかし菜々緒様には思った以上に不評のようだ。
「えェ?」
「ほらァ、ちゃんとプロフィールには本名を書いてください。ジャスティス・キッドではなく。美剣アスカと!」
憮然とした顔をした菜々緒様にプロフィールを突き返された。
「ボクが来たからにはもう安心です。地球の平和を守るため。さらに可愛らしいお嫁さんをゲットするため遥か遠くの異世界からママチャリに乗って颯爽とやって来た。そうボクが正義の味方、ジャスティスキッド。華麗に見参!」
さらにボクは得意の変身ポーズでバッチリ恰好をつけた。
これで菜々緒様もうっとりだろう。
「いやいや、そういうのはいいから。ふざけないで」
殊の外、菜々緒様には評判が悪いみたいだ。
「えェ?」ふざけてるワケではないのに。
「そういう無駄なアピールは女子は引くから…。って言うか、邪魔だから。ウザいからやめてくれますか」
さんざんな言い草だ。
「えェ、そうなんですか」
なんてことだ。せっかくのアピールだったのに。ボクはスゴスゴと腰をおろした。
「それよりあなたの職業欄には……」
「ハイ、職業はもちろん『正義の味方』です。かれこれ十五年、地球の平和のために粉骨砕身働いております」
「ああァ、そうなの」
菜々緒様はあっさりスルーした。
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