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菜々緒様
翌日、またボクはママチャリに乗って颯爽と『結婚相談所ハッピーパラダイス』を訪ねた。
当然、行き交う女子高生たちは『キャーキャー』言って悲鳴を上げている。
「フフゥン」ボクは笑顔で手を振り女子高生らに応えた。
もちろん仮面をかぶっているので笑顔かどうかは女子高生たちには見えない。
「キャーキャー、怖ァい」
女子高生たちは悲鳴を上げて隠れてしまった。
「フフゥン」
シャイな女子高生だ。
まったく人気者はツラいモノだ。
ボクはネガティブな声は聞こえない。都合の良い耳をしていた。
だが運悪く警察官に呼び止められた。
「ちょっと、そこの仮面をかぶっているキミ!」
「え、ボクですか?」
この田無市でボクを知らないなんてモグリなのか。
どうやら新しく配属されてきた警察官みたいだ。
「キミ、職業は?」
思った通り職務質問だ。
仮面をかぶっているせいか、日に二、三度は警察官から職務質問をされていた。
面倒くさくて堪らない。
「ボクの職業は、正義の味方ですけど」
「はァ、冗談でしょ。正義の味方って?」
若い警察官は鼻で笑った。
「いえいえ、ジョークではありません。世界の平和を守るため、そして可愛らしいお嫁さんをゲットするため遥か遠くの異世界からやって来た正義の味方。ここに見参!」
ひと通りボクは変身ポーズを披露した。
「いや、冗談はカッコだけにしてもらえますか」
「冗談じゃないんだってェ」
「ちょっと、そこの交番まで来てください」
「いやいやァ…、決してボクは怪しい者ではありませんからァ!」
こうして職務質問で無駄な時間を過ごしてしまった。
かなり時間が経過した。
ボクが駅前の結婚相談所『ハッピー・パラダイス』へ入ると菜々緒様がボクを見て驚いたみたいだ。
「えェ、性懲りもせず、また来たの?」
菜々緒様は呆れたような顔をして出迎えた。
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