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美剣アスカ
「えェ、性懲りもなくまた来たの?」
菜々緒様は呆れた顔でボクを出迎えてくれた。
「もちろんです。たとえどんな苦難が待ち構えていてもボクは決して逃げも隠れもしない!」
「いやいやァ、こっちが逃げ出したいくらいなんですけど」
菜々緒様は頭を抱えた。
「地球の平和と可愛らしいお嫁さんをゲットするため遥か遠くの異世界からママチャリに乗ってやって来た。正義の味方、ジャスティスキッド。華麗に見参!」
決まった。
圧倒的にカッコ良いポーズだ。
ボクはいつものように啖呵を切った。
女子高生や子供たちならキャーキャー言うだろう。
誰もが憧れる人気者のツラいところだ。
「あ、そういうの。良いから」
しかし菜々緒様はあっさりスルーだ。
「えェ、いやァでも……」
こんなにカッコ良いのに残念だ。
「お願いだから、そういうコスプレイベント的なノリは秋葉原かコミケでやって頂戴!」
「いやいや、コスプレじゃァありませんよ。ボクはマジで正義の味方なんですから」
「あのですねえェ。美剣アスカさん。ここは結婚相談所なんですから。そういうイロモノ的なノリは勘弁してほしいの!」
「いやいや、イロモノ的なって、ヒドいなァ。今、田無市界隈の子供たちには絶大な人気なんですから」
ボクなりに頑張っているのに菜々緒様はまったく評価してくれない。
「美剣アスカさん。昨日、ハッキリ申し上げたわよね。お引き取りくださいと!」
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