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むかしむかし、ある小さな王国のお話です。
小さな王国、その王都の近くに大きな森がありました。ある時その森へどこからともなく一匹の大きな竜がやって来きました。
竜はその森を気に入ると、そこへ居着くようになってしまいました。
王都の住民達はすぐ近くの森へ竜が住み着いていることを恐れ、王様に訴えかけたのです。
「王様、どうかあの邪悪な竜を退治して下さい」
王様は民達の願いを聞いて、討伐軍を森へと差し向けました。
しかし討伐軍の兵士達は竜の鼻息で吹き飛ばされ、森の入口へ帰されてしまいます。何度も何度もそれを繰り返し、討伐軍はこれは駄目だと都へと戻りました。
王様は兵士達の話を聞いて、次は宮廷魔術師に竜退治を命じます。すると宮廷魔術師は言いました。
「新鮮で美味しい甘い果物をたくさん集めて森へと運んで下さい」
王様は宮廷魔術師に従い、国中から新鮮で美味しい甘い果物を集めて森へと運びました。
竜は毎日毎日運ばれてくる果物を食べました。そしてその美味しい果物に夢中になったのです。
果物を竜へと捧げるようになって1年が過ぎました。宮廷魔術師は手にした液体の入った小瓶を掲げながら王様に進言します。
「我が王よ、これはわたくしめが1年の時間を費やして作った猛毒にございます。この毒を果物に仕込んで竜に食わせるのです」
王様はさっそく猛毒を真っ赤な林檎に塗りつけ、森へ運びました。
竜は真っ赤に熟れた美味しそうな林檎にいつもの様にかぶりつきます。しかし直ぐに体中が痛くなり、息苦しくなってきました。
竜は苦しそうに大きな呻き声を上げると、背中の翼を懸命に動かして空へと飛び上がります。
よろよろと上下左右に蛇行しながらゆっくりと空を行く竜の瞳からは大きな大きな涙の雫が溢れ落ちました。
そして、その涙はまるで雨のように都へと降り注いだのです。
それからこの国では雨がやまなくなってしまったのです。どんよりと厚い雨雲が空を覆い、都には陽の光は届きません。雨だけが絶えず、降り続ける……そんな竜に呪われた国が、このレイン王国なのです。
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